1月の製作発表記者会見レポートでもお知らせいたしましたように、ゴールデンウィーク真っ盛りの5月4日、ユナイテッド・シネマメンバーズカード会員の方10名様とご同伴の方10名様(ユナイテッド・シネマ全10劇場、たくさんのご応募の中から抽選で選べばれた各劇場1組2名様のお客様達です。)総勢20名様のお客様と共に、『隠し剣 鬼の爪』の撮影現場に行ってまいりました!!
刻一刻とクランクアップが迫り、クライマックスシーンを撮影中というまさに大詰めといった状況の中、製作元の松竹株式会社の多大なるご協力を得て、私たちはあの『たそがれ清兵衛』撮影見学の時同様に貴重な体験をさせていただく機会に恵まれたのでした。
場所は、『たそがれ清兵衛』の時と同じく京都にある松竹京都撮影所。見学当日は全国的に大荒れのお天気。そして京都も例に漏れず朝から降りしきる雨。途中、少〜しだけ明るくなり、これで雨も上がるかなと期待を持たせておきながら、結局その日は雨が上がることはなかったのでした。そのように天候には恵まれなかった今回のツアーではありましたが、どっこい、松竹京都撮影所での半日は頭からしっぽの先まであんこがぎっしり詰まったタイ焼きのように、充実感溢れる中身の濃い見学となったのでした。

実際にどんなものを見させてもらったかと言いますと、まずはクライマックスシーン用の鉄砲隊の練習風景を見学。3日間の訓練中2日目というその日は、広いセットの中で数十名の役者さんに大学の先生が中心となり、銃と槍の演技指導が進められておりました。銃や槍は振り回すため実際に槍が飛んでくると危険だということで、我々一行は少し離れた場所からその模様を見学。それでも、迫力は十分解かります。衣裳は笠のみを身に着け、その他はスウェットなどそれぞれ動きやすい物を着用し、銃や槍の使い方を手の先から足の先まで全神経を集中して身につけているのが伝わってきました。
皆が一斉に先生の掛け声で銃や槍の型を決める様は、一種ダンスのようでもあり、実際はスクリーンでどのように見せるのかは全くもって分からないのですが、衣裳を身に着け美しく決まったら圧巻だろうなぁと思ってしまうほどでした。
そして、説明と同時に実際にその銃と槍を今回ご参加の方々にも手に取らせてもらうことができました!「重い! 回す時大変!」といった声がきかれたその銃のモデルは、クリミア戦争や南北戦争をはじめ日本の戊辰戦争でも使われたという世界中の戦争で使われた銃だそうです。
時代考証を大切にされている山田監督だからこそなのか、このように小道具に至るまでその時代を忠実に再現するという姿勢に改めて感銘を受けました。
その後はいわゆるメイク室、支度部屋へと向かいメイク担当の方に、カツラを手にエピソードなどを交えながら楽しいお話を拝聴したのでした。自然な出来上がりがいかに大切か、演じている役者さんにも不自然さを感じさせないようにすることが重要なのでとても時間のかかる作業だと語るその姿には、何十年と受け継がれてきたであろう職人魂が感じられたのでした。
数々の作品が作られてきた証が、そして数々の俳優さん女優さんがこの場で、演じる役へと移り変わっていったのだろうという証が、そこには今もまだ残っているようなそんな錯覚すら覚える場所でした。
支度部屋は畳の部屋なので土足厳禁。鏡の付いたメイク用机が並び、後ろにある棚にはかつらをはじめとする撮影で使用する様々な物が置いてあったりします。決して近代的とは言えないかもしれないその支度部屋の様子が、松竹京都撮影所の大切にしたい長い歴史を感じさせ、より一層錯覚を生じさせたのかもしれません。
 
続いて向かったのが、『隠し剣 鬼の爪』で実際に撮影が行われた、主演の永瀬正敏さんと上司役の緒形拳さんとの絡みの廊下のセット。しかし、出来上がった映画の中では城の外側は姫路城を写しているのだそう! さらに「へぇ〜」と思ったことは、これら撮影が終了したセットはロケでの撮影中に取り壊され、その間にまた新たなシーンのセットを組み立てるのだそう。間近に見るセットの建物や植木や花々は細部に至るまでとっても綿密に作られ立派でした。それだけに何だかもったいなくも思いつつ、念入りに撮影スケジュールが組み立てられ効率よく進行されてゆく事実に感心しました。そんな貴重なお話を聞きながらセット内を思い思いに堪能した我々は「この位置に永瀬さんが立ち、あそこに緒形さんが立っていたんですよ。」と聞くとボルテージも一気に急発進!!
そしてその高まった気持ちのまま本日のメインイベント会場、撮影現場へいざ出発です!!


 

静寂したセット内には、やはり凄まじいほどの緊迫感が溢れていました。30名はいるのではないかと思われる現場スタッフの方々は指揮をとるスタッフの声にすぐさま動きます。その機敏さは見習いたいぐらい。。。
中央に作られた小さな家の中からは山田監督の指導する声が微かに響きます。中には主役片桐宗蔵役永瀬さんと、壮絶な果し合いをする事になる親友にしてライバル狭間弥市郎役小澤征悦さんが。
シーンとして流れるのは僅かに数十秒になるのでしょう。しかし、僅か数十秒であっても大切に大切に作られているのです。幾度となく繰り返されるテスト。その度に山田監督の極め細やかな演技指導が入り、演じる永瀬さん、小澤さんが演技を組み立てます。
そしてようやく「本番!」の声。冷房も切り、周りのあらゆる“音”をなくし、ただただ発せられるセリフのみが広いセットを包みます。やはり『たそがれ清兵衛』の時と同じく、思わず息まで止めてしまうその間の緊張感といったら相当なものでした。そこにはどこか神聖な空気が漂っていた気がします。
お昼休憩を挟み、時間としては正味2時間弱ぐらいでしょうか。私たちは、それぞれに感慨深い時間を過ごせたのではないかと思います。
そして、山田洋次監督との記念撮影や休憩の折には、山田監督自らが私たちにお声をかけてくださったりと、暖かいお心遣いをいただきました。そんな山田監督の本来の優しさが映画の中にも自然と現れているのでしょうね。

もちろん監督・俳優さんがいなくては映画はできません。しかし、周りにいる多くのスタッフの精魂こもったお仕事が1本の映画を作るのに重要な柱となり、様々な小さな事が積み重なって作品が完成していることを深く実感した今回の撮影見学でした。
今回、見学したシーンがはたしてどのようにスクリーンに映し出されるのか、そしてどのような映画となって私たちの目の前に登場するのか、首を長くして楽しみに待つことにいたしましょう。
公開は、10月30日(土)。


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