1つの作品で2回、それもこの日本で会見をしてくれるというのは異例のこと。そんなことからも、『ラスト サムライ』にかける意気込みの強さと日本に対する敬意の深さがうかがい知れます。
髪の毛を再び短髪に戻し意気揚揚と登場したトムは、前回の来日時よりも数倍もテンションが高く、いつにも増して終始満面の笑み状態でした。
続いて渡辺謙さんや真田広之さんが登場すると、前回同様熱〜い抱擁が交わされ再度の再会を互いに喜んでいる姿に、培われた友情を感じるのでした。
そして、こんな風に各々が映画が完成後の気持ちを語ってくれました。
ユナイテッド・シネマ(株)マーケティング部 西條 亜紀

監督) 3年間この映画を暖め続け完成し、僕の人生・キャリアにおいて今のこの瞬間はとても素晴らしい。今朝のジャパンタイムスに「アメリカは他の文化に無関心である」という記事が出ていたが僕はこのアメリカ人の無関心を何とかしたいという気持ちで作ったんだ。『ラスト サムライ』はまさに日本人の暖かい心とアメリカという国の二つの文化の融合なんだ。
トム) この映画に関わった最初から、日本のみんなに観てもらうことが待ち遠しくて仕方なかった。僕は日本の文化・歴史に大変な敬意を持っている。日本のみんながこの作品を観て、僕ら映画に携わった者が一体何をしたかったのか、理解して味わってもらえたら嬉しいよ。
謙) 先日ハリウッドで、"今後活躍が楽しみな俳優"という事で一つの賞を頂いてきました。その時改めて感じたことが、「あぁ、日本って小さいんだなぁ。」ということでした。日本の外に出て仕事をし日本を見ると、日本が海外からどう思われて、どう感じられているのかが改めて感じられるんです。今回この映画に携わったスタッフ・キャスト皆そうなんですけど、もっと日本を広く知って欲しい、もっときちんと知って欲しい、そういう思いで1年間やってきました。
トム) 一言付け加えさせて!実は、もう内輪の人達には映画を観てもらったんだけど、前例がないぐらい「すごい映画だった!」という反響が返ってきたんだ。「本当に俳優達が素晴らしい」と。特に日本の俳優のパワー・芸術性・なんという才能の持ち主達なのかという賛辞がね。僕も、彼らに参加してもらって、「なんてラッキーだったんだ!」と胸に迫る思いがしているよ。
真田) 今のトムの言葉は感謝を込めてそのまま返したい。ハリウッドのワールドマーケットで日本の物語を取り上げてくれ、しかもいろんな意見交換をしながらベストの道を紡ぎ出せたと思ってます。彼らの理解と日本文化に対する尊敬を常にセットの中で感じてきました。一緒に仕事が出来光栄だし、誇りに思ってます。エド(監督)はよく日本の事を理解していて、トムにはもともと"サムライスピリット"があったからこそ"ネイサン"役を引き受けたんだと思うんです。それは撮影を通して立証されました。この映画のタイトルは『ラスト サムライ』ですけど、トムは「ファースト サムライ from アメリカ」という感じです。(笑)
(特にトム大笑い!!)
小雪) この作品に入る前は嬉しさより不安の方が大きかったんです。というのも、時代劇も初めてだし着物も初めてで、その時代に生きる女性として役に生きられるかが常に念頭にありました。このキャスト・スタッフの方たちと仕事が出来てすごく誇りに思いますし、自分の人生の宝物にしていきたいと思ってます。


A. 一つだけ選べというのは酷な話だねぇ。日本の俳優さんと共演した経験から言うと、芸術性・俳優としての能力のすごさ・プロ意識・思いやり・寛大さ(と、ここで横にいた渡辺謙さんと互いに顔を見合わせ大きな声で大笑い!)・ユーモアも重要ですよね!?謙さん?(と、謙さんに問い掛けながらまだまだ笑いは止まらない!)・いろんな面で感銘を受けたよ。(日本語で)ありがと。

A. ハハハ。ちゃんとやったよ、トレーニング。最初はこれも出来なかったんだ(と、立位体前屈を見せてくれたトム)。25ポンドの筋肉をつけたよ。体の重心を下に下す訓練もしたしね。それらを撮影前1年から撮影中も通して続けたんだ。つまりお尻を下げることだね!重心を下げ、足を少し広げ、甲冑の重みを体で支える体力をつけたんだ。それを助けてくれたのが、ここにいる共演者の2人だよ!(と、謙さんと真田さんを指すトム)。着方を教えてくれ、大丈夫だよと勇気づけてもくれた。
訓練は毎日で、別のシーンを撮ってる時も1日に2〜3回は甲冑を着てサマになるように訓練を続けたんだ。1日10〜12時間ぐらいあれを着たんだよ。アハハハハ。甲冑を着ない格闘シーンも1日10時間続けて撮影するんだ。その前に1時間半ウォームアップをし、空いてる時間を見つけてはストレッチをした。怪我はしたくないからね。もちろん相手にも怪我をさせたくないしね。
謙さんも真田さんもとっても剣の達人で、特に真田さんはコントロールがきくんだ。ビシビシ叩かれはしたけどね(笑)。だけど、僕に絶対怪我をさせなかった。それはすごいコントロールが必要なんだ。コントロールはバランスが必要で、それがないと相手に怪我をさせるだけだからね。
実際映画を観てもらえると分かるけど、僕と謙さんの決闘シーンはホントに頭スレスレのところを刀が通るんだ。(と、トムはまたもや大笑いで謙さんとその場面をいきなり再現!!)アッハハハハ。
相手を信頼してないととても出来ない事なんだよ。僕達はそれだけ互いに信頼しあっていたんだ。僕はある高さに体を保たないといけなかったんだけど、失敗しちゃってさぁ(謙さん、真田さん、通訳の戸田さんも皆大笑い)。だけどそのまま撮影を続けたら案の定ぶつかっちゃったね。ホント、危なかったよ。アハハハハ・・・。短い質問に長い答えでゴメンナサイ。(笑)

A.(監督)アメリカと日本では共通したある誤解がある。日米関係は約60年前(大戦後)から始まったと思っている人も多いが、実は150年前から始まっているんだ。その時代は、イギリスが香港に入り、アメリカがフィリピンに攻め入っていた時代だ。だから日本も帝国主義を意識していた時代だと思う。
明治維新が日本で起こった頃、世界中で同じような革命や維新が起こっている。僕にとって大事なメッセージは、世界中にいろんな社会があっても時を同じにして同じような変革が起こっていた事を見せたかったんだ。"武士道"は世界中で理解出来るものだと思うし、西洋から来た人が"武士道"の精神に出会いいかにその影響を受けるかを見せればとても面白い物語になるんじゃないかと感じた。特に主役の2人、"ネイサン"と"勝元"を通して、全く違う国・文化においても共通した男の中の感情を表わしているんだ。
(トム)僕はこの映画の脚本をもらって"武士道"を知った。その中に男として信じるべき同じ心情があることを知ったんだ。人への思いやり・忠誠・義務・英雄の勇気とは何かという定義だね。その英雄の定義とは決して盲目的なものではなく学んで身につくものだ。この映画を観る人が別の文化に対して目を開くようになってくれたら嬉しい。
映画の中で"ネイサン"が辿る旅や、僕は南北戦争のことも勉強したんだけど、それら映画の為に勉強した知識を通して、初めてインディアンとの抗争も理解できたような気がする。そして歴史は繰り返すんだなと思ったよ。
"サムライ"はあの時代のアーティストであり哲学者だった。「サムライは主君に尽くすもの」というセリフがあったけど、本当にそうだなぁと僕はとても感銘を受けたよ。"サムライ"を勉強する事によって人生を見直した。
また、世界の垣根を壊してゆく道があるんじゃないか、それは相互理解を通じてしかあり得ないことを学んだ。日本はすごい伝統を持っていると改めて敬意を深くしたよ。また日本の国民に対しても敬意を持って受け留めた。そういう目で今の世界を見ると、世界の方々で戦争が起こってるけど、それは字を読めなかったり学問がなかったりという無知が偏見を育て人種差別を促進し、文化的孤立を生み出し戦争につながるんだ。
この映画を観て理解して欲しい重要なポイントは、アドベンチャーだけど、その下には別の文化を理解することの重要性が流れていて、それは"武士道"の一部でもあるし、普段僕が信じている人への思いやりがいかに大切かという哲学も"武士道"の一部であるといった、そんなメッセージを持った映画が出来て誇りに思うよ。

A.(トム)新渡戸さんの本も読んだよ。切腹や武士の掟なんかを学びたい時には何回も何回も参考にしたぐらいさ。もちろんさっきも言った南北戦争の本も読んだよ。そういう歴史を勉強し正確な絵を頭の中に収め、学んだものを演技に反映させた。肉体的にも、"ネイサン"が日本でいろんなことを学んでゆく精神的な面での変身を演技で表す時にも参考にした。監督は僕の1年半前から始めてたけどね。
この日本のキャスト・スタッフの人達が来た時にどう思うのか、僕らは本当に日本を理解してるのかが非常に興味深かった。日本の方々は僕らのリサーチを正しいと言ってくれ、さらにその上に積み上げていろんなことを教えてくれたんだ。撮影の間中毎日、僕は学ぶことを終えることがなかったぐらい新しいことを吸収したよ。アメリカでも"サムライ"は有名だけど、怖い・刀を持ってる・闘うといった先入観がある。でもこの映画を観れば、いかに"サムライ"が優雅でエレガントな人達か、そしていかに哲学があるか、新しい"サムライ"像としてきっちり描いていることが分かるだろう。
(謙)"誇り"であったり、"謙虚さ"であったり、"仁義"ということではなく、"正直であること""約束を守る""常に人を敬う""若い人を助ける"など、生きてる中で必要なこと、つまり日常的に使われる"精神"を、映画をやりながら僕自身感じる瞬間がありました。それらを改めて気付かされんです。汗と涙を流しながら一所懸命頑張っている姿に敬意を表する、そういうことで一日一日"武士道"を体現して僕らの中に埋め込まれたそんな気がしました。
(真田)先程トムが言っていた"サムライの二面性"のように、ただ闘うイメージではなく彼らが持っていた独特の"精神性""文化"、動と静のコントラスとでも言うべきものを監督も演出として望んでくれました。極力その両面を打ち出して"サムライ"という日本の大事な文化を世界に紹介出来たらなという思いでやりました。
彼らはとても勉強していて、いい加減なことは言えないし、逆に僕らもしっかり勉強しました。日本で時代劇を作る何倍も勉強させられ、お互いに勉強合戦をしていたような(笑)気がするほどです。この映画を通して僕も学び直したことが多かったし、これを観た若い世代の人達がもう一度自分達の持ってる文化の素晴らしさを再発見して受け継いでもらうことがこの映画のテーマだと思います。世界中でそれが出来たらという願いもあります。歴史物語ではありますが、テーマは決して古くないし、今こそ大事な作品だと思いますよ。
(監督)今現在世界で、非常にいろんな技術的変革が行われている。まさにこの映画の中と同じような変革なんだ。この映画の一番大きな問い掛けは、このような時代の変革の中でいかに人間が伝統的な価値観や人間性を保ち続けることができるかということだと思う。

<小雪へ> 小雪さんは自ら全ての瞬間どう演じるべきかを全部知っていた。素晴らしい勘、どういう気持ちで演じるかを彼女自身が分かっていて微妙な演技をとてもよく理解していたよ。
と、トムも、エレガンスで優雅な佇まいで、すばらしい才能によって演じてくれたんだと賞賛の声。
<真田&謙へ> 彼らは、僕よりはるかにこの瞬間どういう演技をすべきかをよく理解していてくれたから僕が教えられる立場になった事がしばしばあったほどだよ。この映画が他の人から学べるという事がテーマになっているとしたら撮影期間中、皆互いから学びあったと思うね。
早くも、渡辺謙さんには"アカデミー賞助演男優賞"の呼び声も高い名演技としてアメリカでも大絶賛されているようです。そんな素晴らしい演技を観るだけでも一見の価値アリです。
日本人である私達が忘れてしまっていたものを思い起こさせてくれるであろう『ラスト サムライ』。さらに、前回の会見時にも皆が力を込めて話していたように、史実に忠実に描くため徹底した時代考証を行ったというのが見事に反映され、改めて日本の歴史の真実をこの映画で認識させられるのです。
今回会見に足を運んでくれたエドワード・ズウィック監督、トム・クルーズ、渡辺謙、真田広之、小雪。長い年月を経てようやく完成された『ラスト サムライ』の公開を前に、皆のすがすがしく自信に満ちた表情がとても印象的でした。
感動で胸が包まれること間違いなしの『ラスト サムライ』は、もう間もなく今週土曜日より期待の公開!!お楽しみに。
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